愛する人を見つけた
「俺さ 昔 二股かけられていたんだ。全然 気付いていなくて。彼女だと思っていた子が 突然、別の人と 結婚したの。驚いたよ。」
香山さんは 自分のことを 話し始めた。
「気付かなかった俺も 馬鹿だけど。女の人って それくらい 平然と 騙せるのかって。ちょっと 女性不信になったんだ。」
そう言うと 恥ずかしそうな笑顔で 私を見た。
「今 ユズちゃん 二股なんて 自分が ボロボロになるって 言ったでしょう。嬉しかったよ。そういう人と 一緒にいたいよ、俺。」
香山さんは 本当に 優しい目をしていた。
「ごめんなさい。本当に。必ず、ちゃんとするから。待っていて下さい。」
私は 真っ直ぐに 香山さんを見て言う。
「待っているよ。それまでは 友達として会おうね。一緒に ご飯食べたり。今日みたいに 遊びに行こう。友達として。」
香山さんの妥協案に、
「辛くならないかな。」
と私は言う。
会うほどに 香山さんを 好きになっていくから。
会う度に 私は 香山さんの気持ちを 早く 受け止めたいと思うはず。
「会えない方が辛いよ、俺は。」
そう言う 香山さんの目は 今までで 一番熱かった。