愛する人を見つけた
「内藤さん。もう一度 さっきの椅子で お待ちください。」
言われるまま 私は 椅子に腰かけて待つ。
手前の診察台から 小学生の男の子が 帰って行く。
さっき 待合室にいた人は この子の母親かなと
思っていると
「カヤマさん。カヤマ ユウゾウさん。奥の診察台へどうぞ。」
と受付の女性が呼ぶ。
『加山雄三?まさか。』
私は 振り返って『カヤマさん』を見る。
私の後ろを 通ったのは 背の高い 若い男性。
『別人だよね。当たり前か』
私は苦笑する。
まもなく 私の椅子は 倒されて 治療は始まった。
40代の女医さんは 意外に 荒々しく治療する。
私は 痛みに 涙を浮かべて 診察台を下りた。