もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
車を走らせて2時間。
記憶をなくしてからこんなに遠くへ来たのは初めてだった。

恭と離れたのも、初めてだ。

嶺は大きな高層マンションの前に車を停めると私の方を遠慮がちに見た。
「大丈夫か?」
その表情が不安に揺れていることを感じる。

「大丈夫。」
本当はこれから開ける扉が怖い。

でも、ちゃんと逃げずに立ち向かうと決めた。

私はぎこちなさを隠すように微笑んだ。

「嘘つきだな。」
そう言って笑う嶺も少し緊張している。きっと私の心を察して、ほぐそうとしてくれているんだ。
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