もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
ここに私は住んでいたんだ・・・。
目を閉じて思いだそうとしてもやっぱり思い出せない。

「大丈夫?」
目を閉じていた私を覗き込む嶺。
「大丈夫。やっぱり思い出せないけど・・・」
「そっか。ゆっくりでいいから。無理はしないで。」
「・・・はい」
「これ、好きだった紅茶なんだ」
そう言って嶺が私に淹れてくれた紅茶の香りをかぐ。

「いい香り」
「これが好きでさ。無くなりそうになると買いに行こうって誘われるんだ。車じゃないといけない場所だったからさ。鈴は運転できなかったから。」
「・・・そう・・・」
「これ以外にも、鈴は紅茶が好きでよく飲んでたんだ。付き合ってた俺もいつの間にか好きになって、鈴がいなくなってからも常にストックしておかないと落ち着かなくて。この香りがなくなるのが嫌でさ。」
そう言って嶺が先に紅茶を一口のんだ。
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