もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
でも、体は治っても私の心は壊れたままで、私の頭も記憶が戻らないままだった。

「痛っ・・・」
いろいろと考えていると、私の壊れたままの頭が痛みだす。
急にこうして頭を金づちで殴られたような感覚に襲われることもまだしょっちゅうある。

私はとりあえず手にしていた包丁をまな板の上に置いた。
台所のシンクに両手をつき頭痛の波が去るのを待った。ガタガタと両手が震えている。

大丈夫。大丈夫と自分の心に言い聞かせる。

こんなのが一日に数回ある。

正社員としての仕事を探しても、働けないのが現状だ。

本当はもっと仕事をして、恭にいつまでもお世話になっていたらダメだとわかりつつも、私にはその術がなかった。

体調のいい日は、市場で掃除や片付けの仕事をしたり、近所の図書館でアルバイトをしながら、生活をしていた。
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