もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
不思議な感覚・・・。

でも今まで感じた記憶の扉の向こうに恐怖は感じない。

なにかに導かれているかのような温かい感覚・・・。

私は目を閉じたまま、その優しい音色に耳を傾け続けた。


「鈴」
いつの間にか曲が終わっていたようで嶺が私の方を見ていた。
「弾いてみる?」
嶺がピアノの前に置かれた椅子から立ち上がり、私の方へ近付く。
そして、私の背中に手を置き、椅子の方へ促した。

戸惑いながらピアノの前に座りちらりと嶺を見ると嶺は優しいまなざしで私を見つめながら、すぐそばに寄り添うように立っていてくれた。

そっと鍵盤に手を触れる。
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