もう一度君と ～記憶喪失からはじまる2度目の恋～

白の鍵盤、黒の鍵盤・・そっと触れていくと私の手が勝手に動き出す。

頭の中に浮かぶのは、町おこしのイベントでピアノを拭いたときに浮かんできた曲・・・。


『~♪』


自然と頭に浮かぶメロディに音符がついてくる。そして・・・勝手に手が動き出す。

浮かんだフレーズを弾き終えると私はふと『これは鈴の音だな』といつの日か浮かんだ言葉を口に出していた。

「鈴っ」
勝手に動いていた体が止まった瞬間、私は嶺に強く抱きしめられていた。
「鈴っ！思いだしたのか？」
耳元に聞こえる嶺の声が震えている。

私が首を横に振ると、嶺は一瞬体に力をいれてから、「そっか・・・」と低い声で答えた。