もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
恭にお金を渡したことも何度かあった。でもそのたびにお金を受け取ってもらえず、仕方なく私は食材を自分のお金で買うようにしたり、生活消耗品を買って恭に少しでも還元できるようにと考えていた。

それでも、恭は私よりも先に消耗品を買っていたり、冷蔵庫に大量の食材を入れて、私がお金を使わせないようにしていることを、私は気づいている。

「鈴?」
台所でシンクに手をついたまま動きを止めている私の後ろにいつの間にか恭が立っていた。
返事ができず、振り返ることもできない私。

恭は何も言わず、私の体を抱き上げて茶の間に運んでくれた。
畳の上に私をおろすと慣れた様子で座布団を出して、私の体を横にする。

目を開けていることができなくて私が目をギュッと閉じて、その上に自分の腕を置いていると、あたたかい感覚に包まれる。

恭がいつものようにタオルケットを私にかけてくれている。

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