もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「洗濯してあるから安心して。エプロンのかわり。」
「・・・ありがとう」
「どういたしまして。」
嶺のにおいのするシャツを着て、私は嶺に手を引かれてキッチンへ向かった。

ここでも、キッチンのどこに何があるか、当然ながらわからない私。

ロコモコを作っていても、どう作っていたかもちろんわかるはずがない。

嶺が好きだといったロコモコ丼。
でも私には作った記憶も食べた記憶もない。

今の私が作る味で、嶺にがっかりさせてしまうんじゃないか・・
いい思い出を汚してしまうのではないか・・

心配が募る。

「あー!」
隣から聞こえた声に視線を向けるとそこには見事にハンバーグをやいていた嶺が、フライパンの中身をぐちゃぐちゃにひっくり返しそびれたところだった。
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