もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
結局ほとんど眠れないまま朝を迎えた。
「鈴、寝れなかった?」
私の顔を見るなり、あとから起きて来た嶺が心配そうに私の方を見た。

「うんん。」
精一杯の嘘をつく。
「今日、病院辞めておこうか?」

嶺は住んでいる場所から近い場所に有名な心療内科があることを探し当てて、予約を入れてくれていた。
今までは恭が薬も処方してくれていた。
でも、これからは嶺と暮らしていくために、恭ではない専門医を見つけることになる。

ちゃんと過去と向き合うために、私自身が嶺にお願いしたことでもあった。

今日ははじめての受診の日だった。

「大丈夫。行きたい。」
その言葉に嶺は少し戸惑うように頷いた。
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