もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「時々」
「・・・はい」
「時々、自分の記憶かどうか定かではありませんが、明らかに2年前よりももっと前の記憶の断片のような声や音が聞こえたり、場面が浮かぶことがあります。」
「記憶を取り戻すことに対してはどう考えていますか?」
「・・・以前は恐怖でしかありませんでした。でも今はちゃんと過去の私とも向き合いたいと思っています。」
逃げないと決めた。
ちゃんと医師に正直に話をして向き合っていかなければ先へ進めないという思いが私の口を開いていく。
「そうですか。現在処方されている薬に関して、医師から説明は受けていますか?」
「はい。睡眠導入剤や頭痛が起きた時の鎮痛剤、安定剤も処方されています。」
「薬は毎日必要ですか?それとも不定期的に服薬が必要ですか?」
「・・・不定期的です。」
「最近生活環境が変わられたと、聞きました。変化に適応できていますか?」
「・・・今のところは。」
「睡眠や頭痛はいかがですか?」
さすがに、正直に言えない。
隣に座っている嶺の存在を感じて私はそこだけは嘘をついた。
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