もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
嶺の仕事の部屋の整理整頓だけじゃなく、私は嶺の弾く曲を楽譜に起こすこともできるようになった。
あとは嶺の作った楽譜をピアノで弾いて、嶺が間違って記入している部分を見つける作業を手伝うこともできるようになっていた。

音感は残っていた私。
聞いた曲をコピーして弾くこともこの一カ月で思い出していた。

私がこの一カ月で思い出すことができたのは音楽に関することだった。

嶺が徐々に私の体調を見ながら見せてくれるアルバムの写真を見ても結局何も思いだせず、断片的に言葉を思いだしてもそれが事実ではなく夢の世界の内容ということも多い。

「今日は新曲の試し弾きしてほしいんだ。」
「うん」
こうして私は嶺の仕事を手伝いながら家のことをして過ごしていた。

「今日は夕方に買い物へも行こうと思うの。」
「俺も行く。」
「ダメ」
< 167 / 432 >

この作品をシェア

pagetop