もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「やだ・・・忘れたくない・・・もう何も忘れたくないのに・・・」

ふと部屋の壁に寄りかかるように立っている男性に視線を向ける。
神永というその男性は悲しそうに床を見つめていた。

泣いてはいないけど、その表情が泣きそうだ・・・。


「いやだ・・・助けてよ・・・恭・・・助けて・・・」
恭の腕をつかみ私は恭を見つめる。
「大丈夫。鈴。大丈夫だから。」
そう言って私をなだめる恭の瞳も戸惑っている。

「もう忘れたくないよ・・・」
急に体から力が抜けて倒れそうになる私の体を恭が抱き留める。

「今の状態で家に戻りますか?今病院のベッドが空いていますから、入院することもできます。」
医師からの言葉に
「帰ります。一緒に帰ります。」
と言ったのは神永という男性だった。
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