もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
全身から力が抜けて、恭の体に寄りかかるようにしないと体勢を維持できない私。
恭の胸に自分の頬をつけながら神永というその男性を見つめた。

ちらりと私を見るその人が、私と目が合うと困ったように優しく微笑んでくれた。

ずきずきと胸が痛む。

この胸の痛みは何だろうか・・・。

「鈴、大丈夫か?」
恭が私の方を覗き込む。
「すこし診察しましょうか」

医師の言葉に看護師が私の体を恭からはなそうとした。

「いやだ!」
恭が離れることに対してのこの不安感はどこからくるのかわからない。
でも恐怖に似た思いで恭に手を伸ばす。
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