もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
その時、部屋のドアがノックされて、恭が寝室に入ってきた。

「薬持ってきた」
水と薬を手に、恭が私の寝ているベッドに近づく。

私が体を起こすと恭は私の手に頭痛薬を渡してくれた。
言葉にしなくても頭痛がしていることが分かっている恭。

それは医師だからわかってくれるのかどうかはわからない。

「鈴」
「ん?」
コップを私の手から預かりながら恭が私を見つめる。
「俺は帰ったほうがいいか?」

私のせいで恭まで振り回してしまった。
もしも私が嶺を再び忘れなければ恭を呼ぶことはなかったかもしれない。

それが一日で記憶が戻ったのだから、これ以上居心地の悪い空間にいさせるわけにはいかない。
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