もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
私は恭の方を見る。
恭は私から目をそらさない。

「ずっとそこに行くのが怖かった。自分でも踏み込んだらいけない領域みたいな場所があって。」
「うん」
「そこに踏み込んだら・・・」
「うん」
「私、壊れちゃうんじゃないかって思ってた。」
「うん」
「だから、行かないように避けてたの。」
「あぁ」
「でも」
私のとぎれとぎれの話を真剣に恭は聞いてくれている。
次の言葉が出るのを待ってくれている。

「もう逃げたくないから。」
「あぁ」
「ちゃんと、逃げずに・・・向き合いたいから・・・」
自分自身とも、恭とも、嶺とも、母親や家族とも・・・
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