もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「今も、私の頭の中にはお母さんの声が響いてる。」
恭はその言葉に私の頭にポンと手を置いた。
まるで痛みを包み込むように。

「私・・・また忘れそうで怖い・・・」
「・・・」
「大切なことまた忘れそうで怖い・・・忘れたくないことまで・・・忘れたくない・・・」
また涙があふれる。

「鈴」
「ん?」
恭は私の体をそっと抱き寄せた。
「前に言った俺の言葉、覚えてるか?」
「・・・?」
「俺、鈴に出会った時、鈴が天使かと思ったって。俺に生きる理由を教えてくれた天使かと思ったって。」
「覚えてる」
「何度であっても変わらない。鈴が忘れたら、俺が思いだす。覚えてる。鈴の記憶に俺がなる。だって」
恭が私から少し体を離した。私の顔を優しく頬笑み見つめる恭。
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