もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
嶺の手は私よりも二回りくらい大きくて、指もかなり細くて長い。
きれいな手をしている。

ピアノを弾くときにはその手の動きに見惚れてしまうくらいだ。

私が手を動かしておさえる鍵盤も、嶺は手を動かさなくても簡単に弾けてしまう。

「その手、いいな。」
ふと嶺の弾くピアノを聞いている私が言うと、嶺が笑った。
「何回も言われたよ。鈴に。」
「やっぱり?」
「あぁ。」
「だってうらやましい」
「そうか?」
嶺がそう言って私の目の前に手を差し出す。
私はその手に自分の手を重ねた。
「ほら、こんなに違う。」
まじまじとその差を見せつけられた私が悔しがると嶺は懐かしそうに微笑んだ。
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