もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
恭は私が話し出すのを待っているんだ。
せかすこともはやしたてることもせず。

ただ私の横に座って、私が話し出すタイミングを、すぐに声の届く場所で待っているんだ・・・。


恭の考えが伝わると、私は恭の隣の心地よさに目を閉じた。

大きく深呼吸する。

私が今生きているのも、こうして呼吸ができているのも、恭がいてくれるからだ。

恭の隣は・・・私が私らしくいられる。

今の私にとって、恭の隣は唯一の居場所だ。


「今度の週末」
「うん」
私が話しだすと、恭は私の方に視線を移す。
その表情は、待っていましたとばかりに少し嬉しそう。
でも、私が変に緊張しないようにという配慮なのか、ポーカーフェイスで穏やかな表情を見せている。
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