もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
まただ。私の心が勝手にどきどきして高鳴り始める。

「もう一曲弾いてくれる?」
「もちろん」
私の言葉に嶺はもう一度ピアノに向かい座る。
「一緒に弾くか」
「・・・弾けるの?一緒に?」
「あぁ。弾いてみよう」
嶺に誘われて私も嶺の隣に座る。

嶺の伴奏に私が勝手にメロディをつける。

「ふふっ」
嶺が勝手にどんどんと伴奏を変えていくから私はついて行くのに必死になりながら笑う。

鍵盤の位置もどんどん私の方へ近付いたり、私の方へ急に飛び込んでくる。

こんなにも近い距離なのに、今は全く恐怖を感じない。
そしてさっきまで感じていた、自分への不甲斐なさが薄れていくような気がした。
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