もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「鈴」
名前を呼ばれて私は洗濯中だった手を止めて嶺の方を見た。
「ん?」
「連絡がついたんだ」
「・・・」
その言葉で私は嶺にお願いしていたことの結果が来たのだとわかった。

緊張が走り、一気に手が冷たくなっていくのがわかる。
「少し座ろうか」
「うん」
嶺に促されて、リビングのソファに座る。
「何かのむ?」
気を使ってくれる嶺にぎこちなく微笑みながら首を横に振ると嶺も私の横に座った。

「俺は鈴のお爺さんとおばあさんとは何度か連絡を取ってたんだ。鈴がいなくなってからも。鈴のお爺さんは今特別養護老人ホームに入所してる。鈴が俺と暮らし始めたころから痴呆が進んでいて、入所する話も実はその時から出てたんだ。1年前に自宅で転倒して腰を骨折して、それから一気に痴呆症が進んで、入所してる。」
「嶺は私がいなくなっても、私の家族と関わろうとしてくれてたの?」
「・・・ずるいんだ。もしかしたら、鈴がそっちに帰ってるかもしれないからっていう気持ちもあった。もちろん、高齢のお爺さんお婆さんはゆくゆくは俺にとっても家族になるから、大切にしたいと思ってたっていうのもあるけどな。」
「ありがとう」
その後、嶺は私の記憶が戻ったり、実際に私の祖父母にあった時に事実を知って私が怒らないようにと、ある事実を教えてくれた。
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