もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「鈴はそのことを知ってすごく怒ったんだ。」
「・・・ごめんなさい。嶺は私を想ってしてくれたことなのに。」
「違うんだ」
嶺が私をまっすぐに見る。
「俺は記憶がなくなる前の鈴を誰よりもよく知ってるつもりだ。そんな俺は、鈴が俺に対して怒っていなかったことはわかってる。確信してるんだ。」
「どういうこと?」
「・・・鈴はお母さんに対して怒ってた。そして、誰よりも自分自身に対して。」
「自分?」
「そう。」
嶺はもう一度私から視線を夜空へ移した。

「鈴はずっと自分自身を責めてたんだ。」
「・・・」
「両親の期待に応えきれなかった。世間の期待にこたえられなかった自分を。そして、家族がバラバラになったことも、両親が自分の前で笑わなくなったことも。全部自分のせいだって。ずっと責めてた。」
何となく、記憶がなくても自分を責める気持ちが分かるような気がした。
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