もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「鈴のせいじゃないのにな。」
「・・・少なからず、私にも責任はあるよ」
私の言葉に嶺は私の方を見た。
「それは違う」
まっすぐすぎて、思わずそらしたくなるような嶺の視線。
「鈴は悪くないだろ。すべては鈴の才能に甘えて、一家の大黒柱にさせようとした両親の責任でもあるし、鈴を人形のように操ろうとした大人の欲が招いた結果だ。」
「でも・・・」
「でもじゃない。それに、鈴は十分すぎるくらい自分を責めて、つらい思いだって我慢だって人一倍してきたんだから。」
「・・・」
私は手にしているカップに視線を落とした。

私がもっとちゃんとできていれば・・・こんな未来にはならなかったのだと思う。
これはあくまで推測しかない。でも・・・今の私だった誰かの力を借りないと生きていけない。
自分のことすら思い出せない。

「俺が一番よく知ってる。鈴は十分すぎるくらいに我慢したし、つらい思いもいっぱいしてきた。だからこそ俺はこれ以上、つらい思いをさせたくない。我慢させたくない。俺がいっぱい甘やかしてやりたい。守りたい。わがまま言ってほしいんだよ。」
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