もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「やっぱりちょっと緊張するね」
「大丈夫。そばにいるし。具合悪くなったときのために泊まる場所も近くにとってあるから。」
嶺は何かあった時のためにと、宿泊する場所を予約したり、近くの病院も恭に連絡をして調べてくれていた。何かあったらすぐに恭にも連絡がつくようになっていると、嶺が車の中で教えてくれた。
「長谷部さんも心配してた。」
「・・・そう・・・」
私は恭とは連絡を取っていない。

どうしたらいいかわからないのが正直なところだった。

「まずは鈴が仕事してた楽器店に行ってみるか。」
「うん。」
嶺は緊張して体に力が入っている私をリラックスさせようと、私が勤めていた場所や、近所のおいしいパン屋さん、よく行っていたレコード店を先に案内してくれた。
私の母校に行っても、勤めていた場所に行っても、子供のころよく遊んだ公園へ行っても、私は何も思いだすことができない。

思いだそうと一生懸命考えてみても、何も浮かんでこない現実に、私は少し焦った。
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