もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
気付かないうちに自分で自分に言い聞かせていた言葉がこだまする。
「週末、俺もそのイベント行くわ」
「・・・」

恭が来てくれるだけで私は安心材料になる。

そんな私の気持ちさえ恭にはお見通しらしい。

「帰るか!」
そう言って恭が先に立ち上がり、膝についた砂をぱんぱんと払った。
その表情がいつもよりも少し柔らかい。
「うん」
私もすぐに立ち上がり同じように膝についた砂を払う。

私たちはいつものように家路についた。
大きな恭の体の後ろに隠れるようにして私は後ろをついて行く。

家の外の水道でいつものように私は恭の肩につかまりながら足を流し、拭いてもらう。

そんないつもと同じことをしている時も、恭の表情はいつも少し違う。
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