もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
その瞬間その男の人の表情が凍り付いた。

「・・・?」
私の足に何かを感じて、凍り付いた表情の男の人から私が自分の足元へ視線を移すと、そこにはよちよち歩きの女の子が私の膝に寄りかかるように立ち、私の顔を見上げていた。

「ごめんね。ブランコ、どうぞ。」
「すみません。もう、すず、危ないでしょ?」
すぐに反対側から若い女性が女の子のそばへ来て、女の子を抱き上げる。
かわいらしい柔らかい雰囲気の女性。
「大丈夫ですよ。」
すずと呼ばれる女の子にブランコを譲ろうと立ち上がると、女性は穏やかに微笑みながら「すず、ありがとうだよ」と抱き上げた女の子に言った。
「あーとっ」
まだうまく言葉を話せない女の子のお礼に私も思わず微笑む。
「どういたしまして。こちらこそすみません。」
私は女の子に小さく手を振りブランコを離れた。

女の子も小さく手を振り返してくれる。
笑顔がきらきらしていて、かわいらしい。
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