もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
私は実の父親にあっても、家族とすら分からなかった。
何も思いだせなかった。

嶺の家には私の両親の写真はない。

声を聞いても、顔を見ても、何も感じなかった。


嶺と再会した時はちゃんと反応した私の心も、何も反応しない。

私は確かめるように自分の胸に手をあてた。

「・・・・はぁっ・・はぁっ・・・」
久しぶりに感じる息苦しさ。

「鈴・・落ち着け・・」
嶺は私の体を抱くようにしながら歩くペースを速めて、公園の駐車場に停めていた車に私をのせた。
「落ち着け」
過呼吸になる私を抱きしめて呼吸しやすい体勢にしながら、何度も大丈夫と耳元でささやき背中を撫でる嶺。
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