もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
私には会いたくないと言った父親。
今の生活がどれだけ大切か、憶測でしかなくてもわかる。

なのに、捨てたい過去を思い出すような名前を自分の娘につけるわけがないか・・と自分で言葉にしておきながら気づいてしまった。

私が記憶を失っていることを知らない父親はきっと私を見て動揺しただろう。
そして、あの凍り付いた表情。

実の娘なのに、私はそういう存在なのだと改めて気づいた。

想像して、覚悟をしていたはずなのに。
目の当たりにすると・・・やっぱりつらい。

流れる涙をそっと私は拭いた。

嶺は私の涙が止まるまで、何も言わずただ抱きしめていてくれた。
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