もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
私の体力がなかなか戻らず、その日は念のためと予約していた旅館で休むことにした。
祖父母には翌日にあえるように、嶺が面会の予約を変更してくれた。

「ごめんね」
旅館に嶺が事情を伝えてくれていて、私たちが宿に着くと部屋にはすでに布団が敷かれていた。

その布団に横になりながら、私はお水を用意してくれている嶺に言う。

「ばか。」
短い一言に、あふれ出す優しさと気遣いを感じながら少しずつ動揺が鎮まるのを感じた。
「念のために薬、飲んでおこう。」
「うん」
嶺に支えられて私は布団の上に座り、薬を飲んだ。

「ありがとう」
「いいえ。少し眠りな?」
「・・・・うん」
再び布団に横になり、私は窓から見える景色に視線を移した。
< 276 / 432 >

この作品をシェア

pagetop