もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「もったいないね、こんなにきれいな旅館なのに。」
嶺が予約してくれたのは地元では有名な旅館らしい。
窓から見える景色も自然豊かできれいだ。

「夜、体調が戻ってたら散歩に行くか」
「うん!行きたい」
嶺の提案に喜ぶ私に、嶺も嬉しそうに微笑む。

「じゃあ、まだ行ってないめちゃくちゃうまいケーキ屋に行こう。」
「行きたい!」
「そこの紅茶もうまいんだよー。」
「のみたい」
何とか私を励まそうとしてくれているのが分かる。

ちゃんと逃げずに現実と向き合うと決めたことを、もう一度私は自分に言い聞かせながら窓から見える景色に何度も深呼吸を繰り返した。
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