もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「鈴」
もう一度名前を呼ばれて私はその人の方を見る。

なぜか全身が急にこわばった。


動けない私の方を見る嶺。
その顔は何かを知っているような瞳で私のようには動揺していない。

「ごめん。俺が連絡したんだ。」
耳元で嶺が言う。
「鈴に会いたいと、話したいという気持ちがあるなら、ここに来てほしいって。」

私が前に進めるように、嶺は嶺なりに考えてくれている。
私と父の関係も、どうにかできないかと嶺が考えて父に連絡をしてくれていたことを私は知らなかった。

「入って座ろう。大丈夫?」
うまく歩けない私の肩を抱きながら、嶺は父に小さく頭を下げると店内にエスコートしてくれた。
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