もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
次の日、私は嶺と一緒に祖父母のいる場所へと向かった。

自分の祖父母と再会しても、何も心が感じない。
そのしわしわの手を握っても、心が何も感じなくなったかのように、感動すらできない。
あたたかなぬくもりを感じても、心では何も感じない。

ただ唯一、私の心が感じるのは、何も思いだせない自分の心への憤りと喪失感だけだった。


「家に帰ろう」
「・・・うん」
結局何も思いだせないまま嶺の運転する車で、嶺と一緒に暮らしているマンションへ向かう帰り道。
「一日休んだら、お母さんと一緒に暮らしてたアパートに行こう。」
「・・・うん」
さすがに、私の疲れもピークで、嶺は一日休むことを提案してくれた。
「ごめんね」
私に付き合わせている嶺に謝ると、嶺は私の方をちらりと見てから険しい表情で前を見た。
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