もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
~♪
再び携帯電話の着信音が鳴り出す。
胸に抱きしめていた携帯電話の液晶画面が反応して、勝手に画面をスライドして通話になってしまった。


『鈴』
その懐かしささえ感じる声に、私の流れている涙がさらにあふれ、ぽたぽたと床に落ちた。
『鈴?』

その声を聞くだけで、その声に名前を呼ばれるだけで、パンパンに膨れ上がっている感情が、どろどろとした気持ちがまるで大きな何かに包み込まれるような気持ちになる。

『・・・』
涙で言葉が詰まって何も話せない私。
『・・鈴。』
「・・・っ」
泣き声を聞かせれば恭はきっと心配してしまう。
ただでさえ心配ばかりかけているのに、これ以上負担にはなれないと、私は片手で自分の口を押えて泣き声が漏れないようにした。
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