もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
どんな私でも、私であることに違いないと言ってくれた恭の言葉を思いだす。
そして、生きる希望を失っていた恭の生きる理由であると言ってくれた言葉も。

『鈴は天使かと思ったよ』
海岸で、海を二人大きな流木に座り見ながら恭と話したことを思いだす。柔らかな表情で私を見つめる恭も。穏やかですべてを包み込むような笑顔も。

恭との時間の思い出に満たされる。

ちゃんと覚えてるよ。
恭。

私、ちゃんと恭とのこと覚えてるよ。
忘れてないよ。

恭は何度も大丈夫と私に言った後、他愛もない話を始めた。

話をすることが苦手な恭。
それだけ私を励まそうとしてくれている気持ちが伝わる。

ちゃんと前に進むために私は心の中で何度も繰り返した。
”ありがとう”と。
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