もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
二人で夕日が完全に沈むのを見届けると、恭はポケットに手を入れたままで言う。
「帰るぞ」と。

その言葉に私は何も言わずに立ち上がり、恭の後ろをついて歩く。

私よりも頭一つ分は大きい恭。
その大きな体の陰に隠れるように私はついて行く。

時々ちらりと振り返り私がちゃんと後ろをついて歩いているか確認しながら恭は歩く。

私とは半歩くらい歩幅も違う恭が、自分のペースで歩けば私は簡単に置いて行かれてしまう。

それが一定の距離を保ったまま歩けるのは、恭が私に合わせてくれているからだ。


「ハックシュン!」
思い切りくしゃみをすると、今日は私の方を振り返り小さくため息をついた。

足を止めた恭。私も同じように足を止める。

恭は自分の上着を脱ぎ私の肩にかけてくれた。
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