もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
きっと私が眠れないことも、緊張していることもわかっている恭。

私のために早く起きて朝食を作ってくれている。

「・・・・」
何も言わずに恭の隣に私もたつ。

昔の作りの台所は狭くて、二人が並ぶと自然と腕が触れそうになる。
でも、今は、今日はこの距離が安心できる。

そんな私の思いまで恭にはわかっているのか、私から離れることも、私を遠ざけるような言葉も恭は言わない。

時々不便そうにしながらも、私をそこに置いてくれている恭は、私を自分の元へ引き取ってくれたときと何も変わっていなかった。

何も言わずにただ隣に立っている私の口元に、不意打ちで恭がたくあんを切った切れ端を入れてくる。
パリパリといい音を立てて私が食べ始めると、もう片方の切れ端を恭が大きな口で頬張る。
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