もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「でも・・・間違いだった・・・」
「・・・」
嶺は私を抱きしまたまま話を聞いてくれている。

私は嶺に抱きしめられたまま話を続けた。

「私は母の生活の支えに慣れればと思って、短期間のアルバイトをしたの。耳で聞いた曲を楽譜に起こす仕事で、かなり時給がよかった。」
「・・・」
「嶺にお願いすることも考えた。でも、私の力でどうにかしたかったの。」
幼いころ、私に力がないせいで両親を苦しめてしまったことを後悔していた私はどうしても自分の力で母を支えたいと意地になっているところがあったのだと、後になると思う。
「・・・」
「ある日、仕事をしていた私のもとに、マスコミの関係者の人たちが押し寄せた。」
「・・・」
「突然メディアの前から姿を消した私の今は、マスコミの人にとっては興味のある話だったみたいで・・・」
「・・・」
「その時、私は母の本当の狙いを知った。」
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