もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「私のせいで・・・ごめんなさい・・・」
何度も何度も謝る。

私は母をあきらめきれなかった自分と、母の本当の考えを見抜くことができなかった自分を責めた。そして、はじめから嶺に相談すればよかったと後悔した。

私が判断を間違えなければ、失わずに済んだ命のことを思うと、嶺のもとに簡単には戻れなかっ
た。嶺に失った命の話をするのは、ただ嶺に悲しい過去を増やしてしまうだけだと思った私は、嶺には妊娠したことを言わないままにしようと決めた。

行き場所もなく、私は母のマンションに体が回復し動けるようになるまで居候させてもらうことにした。

でも、母は私に何もしてはくれない・・・。
心も体も傷ついていた私には、食欲も気力すらもわかなくて、ただ毎日布団に横になり過ごした。

どんどんと緩くなる左手の薬指の婚約指輪を毎日見つめながら、これから先、嶺と本当に幸せになれるのだろうかと、未来を考えながらただひたすら涙を流し続けた。
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