もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「お母さんが亡くなったことを知って、鈴を探すためにいろいろと調べた。その時に鈴が流産したことも知ったんだ。」
「ごめんね・・・すぐに言えばよかったのに・・・私・・・」
抱きしめられていても、嶺が首を横に振ってくれていることがわかる。
「お母さんの恋人という男が入っていたのは、かなりの高所得者の入る施設だったんだ。」
「・・・え?」
知らなかった事実。

「お母さんの恋人という男は確かに難病指定されている病気だった。若くして離婚をしていて子供はいなかった。親戚とも疎遠で、家族らしい家族がいなかったらしい。ギャンブルの癖が直せなくてほとんどの財産を使い果たしてたんだ。」
「・・・」
「自分の余生が長くないと思っていた男は、相当な散財の仕方をしたんだと思う。思ったよりも命が長く続いて、その人は焦ったんだろうな。お母さんからお金をもらい、自分が入所している施設に居続けるための金をまかなってたんだ。」
「・・・」

「お母さんがなくなってからその人がお母さんにあいに霊安室に来たことは知ってる。それに、あとを追うように命を絶ったことも。」
こんな状況になってもまだ、私は母を不憫に思い同情してしまう。
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