もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「俺は誰からもちゃんと愛情をもらった経験がないんだ。」
「・・・」
「別に悲観してるわけじゃない。でも、不利だと思う。」
「・・・?」
「自分の感情が愛かどうか、正直美香といるときにはわかってなかった。」
恭は私が握った手をそっと離して、握りなおした。

私の手を包み込むように。

「守りたいと思った。支えたいと思った。美香のこと。」
「うん」
「離れたくなかった。そばに置いて、無事を確かめたかったんだ。」
「うん」
「美香が笑ってくれると嬉しかった。でも、その気持ちは家族に対するものと同じなのか、好きな人にたいする物なのか分からなかったんだ。」
懐かしそうに微笑む恭。

その瞳を見れば、恭にはちゃんと愛があることがわかる。
自分ではない誰かのために、そこまで思えるのは、ちゃんと恭の心が愛を知っていて、愛をほかの誰かに向けているからだ。
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