もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
私の言葉に嶺は膝についていた手を離して、私の方に視線を向けた。

「おう」

そう言って微笑む嶺。

私たちは仕事で一緒になることが時々あった。

嶺は何度か深呼吸をしてから、スーツのジャケットを脱いで手にかけた。

「この前の演奏会、よかったじゃん」
「ありがとう」
初めての単独のコンサート。嶺も来てくれてらしく、感想をメールしてくれた。

「特にアンコールの時に弾いた新曲。面白かった。」
「そう?やっぱり?初めての曲調だったでしょ?」
「あぁ。変調する最後が特に面白かったな。」
嶺は私が曲に込める想いを察してくれる唯一の人だ。
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