もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
床に嶺の持っていたジャケットが落ちる。
「大丈夫か?」
私の足元を確認して、嶺が私を支えている手に力を込める。
「ありがとう」
幸い電気はすぐに非常灯になっただけで、あたりは見えるようになっている。
「気をつけろ」
「うん」
嶺はそっと私から手を離すと、非常連絡ボタンを押しながら「すみません」と話しかけ始めた。

『現在状況を確認して警備員が現場に伺います』
そう返事が来てから、すぐに来た警備員。
でも、エレベーターの頭上から警備員の声がするだけで、エレベーターは動かない。

結局、修理業者がくるまではエレベーターの中で待つことになった。

「座ってろ」
そう言って嶺が脱いだジャケットを床に広げる。
「いいよ。大丈夫」
「ばか。遠慮してんなよ」
そう言って嶺は先に床に座る。
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