もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「嘘だな。憐れみを感じた。今」
嶺はそう言って携帯電話を胸ポケットにしまった。
「見たい。もっと本当にかわいかったよ?」
「カワウソはかわいくても、俺をなんか心配しただろ。かわいそうな奴だって。」
「少しだけ。でも・・・」

恭と一緒になることを選択した私には、これ以上の言葉を言う資格はない。

「ばか。遠慮すんなって言っただろ?俺は大丈夫だよ。今、結構楽しんでるんだ」
「・・・」
「やせ我慢じゃない。本当に。好きなときに好きなものを食べて、飲んで。仕事して。癒しまでいる。自由を謳歌しちゃってんだよ」
「・・・」
「それに俺が本当にダメージを受けてたら曲作りできない」
確かに。嶺はどこか繊細なところがあって、精神的に落ち着かないときは曲がなかなかできないことがあった。でも最近は立て続けに曲を発表している。

「もう、あふれて止まらないんだよ。音楽が」
「・・・もしかしてそのカワウソの曲?」
私の言葉に嶺はばれたかといわんばかりに、目を丸くした。
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