もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「ありがとう」
「・・・」
私の感謝の言葉にも恭は何も言わずに少し眉をあげただけで、再び歩き始めた。

恭は必要以上には話はしない。


私には、そのほうが好都合だった。


病院のベッドの上で私は真っ白な頭で目覚めた。
自分の名前も、言葉もわかっているのに、私がなぜ海にいたのか、それまで何をしていたのか、一切記憶にない。

海岸で倒れていたとき、私は栄養失調と脱水、重度の肺炎を起こしていたという。

病状を伝えられても、なぜそうなったのかもわからなかった。
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