もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
若菜の無邪気さに、これから仕事がやりにくくなりそうと思っていた嶺も前向きになることができた。
「じゃあ、後日改めてご連絡します。何かありましたらいつでも連絡ください。」
若菜と嶺は連絡先を交換してから別れた。

若菜が帰ったマンションの部屋はやけに広く感じる。

一度は引っ越しも考えた嶺。
もうここにいる理由はないのだと思っても、簡単には引っ越せずにそのまま住んでいる。

もうここで鈴を待たなくていい。
もうここに鈴が戻ることはない。

なのに、この場所から離れることができない・・・。

嶺はこみ上げる気持ちを止めようとピアノを弾き始めた。

カワウソのソウちゃんは嶺がピアノを弾き始めるとすぐそばに来てごろんとリラックスし始める。
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