もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「神永嶺といいます」
嶺は私から距離を保ったまま話始める。
かなり戸惑っているのか、何を話そうか言葉を選んでいるようだった。
ひと言話をするたびに、私と嶺の間に立っている恭に視線を向けて、まるで『これでいいのか』と確認しているようだった。

きっと私が意識を失っているときに恭が私の話をしてくれたのだろうと思う。

「ピアニストをしています・・・年齢は鈴・・・さんと同じ27歳です。」
「・・・」
遠慮がちな言葉を続ける嶺。

「どうぞ座ってください」
そう言って恭は病室に一つしかない椅子を嶺にすすめた。
「ありがとうござます」

嶺と私の距離が突然近くなり、私は恭に助けを求めるように視線を送った。

そんな私に気が付いた嶺が、椅子に座ろうとしていた体を動かし、再び私と距離をとった。
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