もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
自分という存在が分からず、2年前の私はかなり不安定だった。
さっきまでいた海岸で海にどんどんと進み歩いて行ったことがある。
その時に私の体を自分の大きな体で包み込むようにひっぱり引き戻してくれたのが恭だった。
海岸まで私を抱えて戻ると、ほとんどそれまでは口を利かなかった無口な恭が感情をあらわにした口調で私に言った。その言葉を私は今も忘れることができない。
『笑わなくていい。話さなくたっていい。何もしなくたっていい。つらいなら泣けばいい。でも、命だけは投げ出すな。命だけは捨てんな。頼むから。』
海水でびしょびしょの体。
恭の顔も濡れていただけかもしれない。
でも、その時私には恭が泣いているように見えた。
あんなに感情的な恭の姿を見たのはあの日が最初で最後だった。
さっきまでいた海岸で海にどんどんと進み歩いて行ったことがある。
その時に私の体を自分の大きな体で包み込むようにひっぱり引き戻してくれたのが恭だった。
海岸まで私を抱えて戻ると、ほとんどそれまでは口を利かなかった無口な恭が感情をあらわにした口調で私に言った。その言葉を私は今も忘れることができない。
『笑わなくていい。話さなくたっていい。何もしなくたっていい。つらいなら泣けばいい。でも、命だけは投げ出すな。命だけは捨てんな。頼むから。』
海水でびしょびしょの体。
恭の顔も濡れていただけかもしれない。
でも、その時私には恭が泣いているように見えた。
あんなに感情的な恭の姿を見たのはあの日が最初で最後だった。