もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
「俺たちは・・・あなたと私は幼なじみでした。幼い時から一緒のピアノ教室に通っていたんです。」
「私はピアノ弾けるんですか?」
「俺よりもかなり腕が上でした」
嶺の表情が柔らかくなる。

微笑みながら私を見る彼の表情に、私の心が覚えていないはずの懐かしさを感じた。

「コンクールでも俺よりも評価が高かったくらいです」
「・・・だから・・・」
今日ピアノを拭いたときに勝手に手が動いたのも、だからかと納得した。

「よく一緒にピアノを弾いていました。」
嶺の言葉にずきんと頭が痛む。

私が顔をゆがめて自分の手でこめかみに手をあてると、恭がすぐに近づいた。
「大丈夫か?痛むのか?」
「・・・ちょっと・・・」
私が顔をゆがめたまま恭を見ると、恭は振り返り嶺の方を見た。
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