もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
私は恭が暮らす部屋で住まわせてもらっていた。古い一軒家。
この2年のうちにも雨漏りや床に穴が開いたり、ボイラーが壊れたり何度もいろいろな場所を修理する必要があるくらい手のかかる家。
恭は必ず家が壊れるたびに近所のホームセンターで材料を買って自分の手で直している。

不思議と、家が壊れるたびに修理する恭の顔は、生き生きとして見える。
まるで自分がその家に住む意味を見つけているような顔。

私は少しずつ恭が家を修理するときに必要な道具の名前を覚えた。
住まわせてもらっている以上、何もしないわけにはいかない。

恭の家にあった料理の本を見ながら、いつの間にか掃除や洗濯、料理を作ることが私の役割になっていた。

はじめは私の料理なんて食べられるものじゃなかったと思う。
それでも、恭は文句ひとつ言わず食べてくれた。

一度も私の料理をのこしたことはない。

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