もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
すぐに私に気づいた恭と嶺が追いかけてくる。
トイレの個室の中で、私が吐くに吐けないまま吐き気と戦っているとトイレの外から声がした。
「鈴?」
恭だ。
「大丈夫か?扉、開けられるか?」
どこまでも優しい声。

私は結局、胃の中が空っぽで何も吐けないまま、トイレの扉を開けた。
私が扉を少し開けた瞬間、その隙間に恭が手を入れてがらりと扉を開ける。
「鈴」
すぐに私の体を抱きかかえるようにしてトイレから出すと、恭は私を抱き上げて茶の間に連れて行ってくれた。
「頭痛か?」
恭の言葉に私が頷くと、恭は隣で心配そうにしていた嶺に声をかけた。
「すみません。そこの座布団を出していただいていいですか?」
「あっはい」
慌てて嶺が座布団を並べてくれて、私はそこに頭をのせた。

頭痛に耐えようと目を閉じる。
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